藤岡のヤリタナゴ・マツカサガイの保護のためのフォーラム開催とその成果の出版Promotion of a forum on the conservation of Yaritanago (Tanakia lanceolata) and Matukasagai (Inversidens japonensis) in Fujioka City and publication of proceedings

著者名Authors

ヤリタナゴ調査会YARITANAGO restration project team

斉藤裕也Yuya Saito・ 掛川優子Yuko Kakegawa・ 福田睦夫Mutsuo Fukuda・ 市毛保夫Yasuo Ichige・ 小林博Hiroshi Kobayashi・ 佐藤善治Yoshiharu Sato

群馬県下に在来種のタナゴ類は藤岡市のヤリタナゴしか残っていない。この個体群はマツカサガイを産卵母貝としており、いずれも県版レッドデータブックでは最も上位にランクしている。市ではこの2種とホトケドジョウを天然記念物に同時指定した。ヤリタナゴの主たる生息地である笹川にはマツカサガイは生息せず、その下流の岡之郷用水に生息するものの個体数は多くない。一方、笹川の最上流部の湧水のある未整備の水田地域には県下有数のマツカサガイ生息地があることが判明している。この地域のほ場整備計画が正式に承認され、ここのマツカサガイ生息地の保全のために広く市民にこの事実を周知して関心を高め、これを行政に反映させて生息地を保全することが適切であると考え、フォーラムを企画した。

フォーラムにはヤリタナゴやマツカサガイの保全を行う側だけでなく、県の農政部局の部長や、土地改良区の理事長にも出席いただき、広く議論を展開するように努め、平成14年4月14日に開催した。

入り口のロビー部分には生息地の状況を説明する写真を30枚展示し、文化財保護課の協力を得てヤリタナゴの生体展示を行った。フォーラム当日は80人の会場に140人が詰め掛けて盛況であった。さらにフォーラム終了後も出席者と別室で話す機会を持つことができ、開発側との意見交換も活発に行い、両者が公式な会議以外で話し合うよい場を提供できたと思っている。

フォーラム終了後、土地改良区側から貴重種生息のために土地の無償提供の話が出ており、換地計画の中にもこの案が盛り込まれている。現在は地元側の協力を生かすべく、河川の設計や工事の方法について、図面上で議論を行っている。

さらに工事終了後の管理についても議論が始まっており、当調査会を中心として幾つかのグループと連携して生息地の管理について、市長あての要望書を作成中である。市長もすでにヤリタナゴの写真入りの名刺を作成しており、市役所職員に与える影響は少なくないものと推される。なお平成15年1月28日には要望書の件で市長との面会が決定した。

写真1 丸山隆氏の基調講演

写真1 丸山隆氏の基調講演

写真2 フォーラムの状況

写真2 フォーラムの状況

写真3 フォーラム開催のメンバー

写真3 フォーラム開催のメンバー

写真4 群馬県下唯一の生息地(岡之郷用水)の状況

写真4 群馬県下唯一の生息地(岡之郷用水)の状況

写真5 ヤリタナゴ 上 (♀)、下 (♂)

写真5 ヤリタナゴ 上 (♀)、下 (♂)

写真6 ヤリタナゴの産卵母貝であるマツカサガイ

写真6 ヤリタナゴの産卵母貝であるマツカサガイ