マムシ対策研修会
第2回協議会研修会として、2010年9月25日(土)に(財)日本蛇族学術研究所が開催する「マムシ対策研修講座」を受講しました。
「かんな川水辺の楽校」では計画時から「マムシの被害が心配」され、その対策については、懸案事項となっております。
この講座では、マムシやヤマカガシといった毒蛇について、生態、見分け方、咬傷の防ぎ方、またその応急処置など、基本的な知識を身に付けることが出来、講習終了後には終了認定証も発行されます。
万が一咬まれてしまった時、どうしたらいいのか、またどのような症状が出るのかなどを学び、いたずらに怖がったりするのではなく、正しい対応を取れるようになることを目的としています。
講習会教材の(財)日本蛇族学術研究所(2005) 「マムシ対策研修講座」研修テキスト」を元に、6月25日に個人受講した記録と併せて報告します。
非常に内容の深い研修会でした。ぜひ、受講されることをお勧めします。
なお、本研修会は群馬県蚕糸園芸振興事業「水生生物とその生息環境の理解促進事業」を活用して実施するものです。
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1、日本のヘビ
身近に生息する蛇の見分け方を、本物の生きている蛇を文字どうり目の前で見ながら説明を聞きました。
画像がぼけ気味です。コンデジでできるだけそばで撮ったのですが...。
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アオダイショウ。木登りが得意(我家のガラス窓を這い上がって行った)。小蛇のときは、柄がマムシとそっくりだが、瞳孔で区別できる。アオダイショウは正円形、マムシは縦長の猫目状。それを見分けるには落ち着かなくては。無毒。 |
マムシ。見えているのは腹側でモノトーン柄、背側の茶色にメガネ模様とはまったく違います。夜行性、冬眠前と夏に妊娠しているメスは昼間明るいところに出てくるので、要注意!森林から平野まで広く分布。顔は彫が深く迫力あり。口はガバッと喉まで開きますが、咬み跡は2本で小さく、針に刺された程度の痛さ。その後、腫れと痛みがでる。咬んだらすぐ逃げるので、草むらで咬まれた場合、マムシに咬まれたと気がつかないで、治療が遅れ重傷化することがある。有毒。 |
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マムシに触りなさいといわれ、触ってみます。
背中はしっかりしたドーム状の背骨があり、意外に硬い!。腹側は平らで骨がなく柔らかすべすべでした。 |
シマヘビ。はっきりしたシマが4本。日のあたる明るいところにいることが多い。動きが早く、気性が荒い。尾を細かく振って威嚇してくる。
無毒。咬まれても、問題なし。 |
ジムグリ。アタマから胴体まで同じような太さであごが目立たない。主に森林に生息。地面の穴にもぐる。おとなしく無毒。小蛇は赤い色。 |
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ヤマカガシ。水田、小川、湿地まで、広く見られる。口の後方に毒牙があるだけでなく、首の背側にも毒を出す腺があり、攻撃されると毒が飛ぶ!ので注意。目に入ると激痛あり。ヤマカガシの毒は、腫れたり痛んだりしない。時間がたってから出血が始まり、ほっておくと重傷化する。 |
ヤマカガシの顔。群馬県の平野部では、餌のカエルが減りヤマカガシも激減しているが、藤岡には多いそうです。性格はおとなしいので、手を出したりしない限り咬まれることはない。
毒蛇。 |
マムシの取り扱い実習。講師の指導で各自、道具を使ってマムシを捕まえ、バケツに入れる。野生ではなく研究室生まれの個体なので、性格穏やか。みんなに繰り返し捕まえられても、尾を振って頭を上げて怒ったりしませんでした。 |
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セアカゴケグモ、これはキーホルダーです。野外には、ヘビだけではなく毒を持った生き物ががいますよというお話でした。 |
アズマヒキガエル。耳やイボから毒液が出ます。目に入ると痛い。蛇はカエルが好物ですが、これは食べない。ところがヤマカガシは、食べてこの毒を自分の毒として利用しているそうな。 |
ハブの採毒見学。ガラス越しなので、安心。 |
マムシとヤマカガシについて
習 性 |
ニホンマムシ |
ヤマカガシ |
活動期間 |
4月〜10月 |
4月〜11月(4月末〜梅雨明けまでと9月に多い) |
活動時間 |
夏は夜間、7,8月には子持ち個体が日光浴する |
昼行性。8月は涼しい朝夕や雨の日。 |
生息場所 |
山地の森林やそれに接する水田、河川敷の草むら |
水辺を好み、水田、河川、池。山間部の水田に多い。 |
行動 |
動き遅く、ジャンプはできない。 |
やや遅い。逃げられないときは、コブラのように頭を持ち上げ毒腺を敵に向けるか、死んだふりもあり。 |
餌 |
主にカエル(子ヘビ)、ネズミ。 |
主にカエル。ドジョウや小魚。誰も食べないヒキガエルも食べる。 |
繁殖 |
胎生。普通2年に1回、秋に5匹前後の子ヘビ出産。 |
6〜7月に8〜40個の卵を産む。8〜9月に孵化。 |
咬傷の発生場所と状況 |
農作業、渓流釣り、山菜取り中に、指先を咬まれることが多い。足は靴を履いているので、サンダル以外は被害なし |
人が近づくと逃げるが、 素手で子どもが捕まえようとして咬まれることが多い。また棒や鎌でたたいて、頸部から飛び出た毒が目に入ることがある。 |
群馬県では年に5人程度で、死亡例はない。
7,8月に多い。正式なデータはない。
・マムシ
人が近づいても、とぐろを巻いたままで逃げないので、見落としやすい。
河川付近の草むらにはサンダルなどで不用意に入らない。いそうなところには肌を出す服装はしないこと。
畑にいて作業に困る場合は、棒などでそっとつついてやると逃げ出す。
・ヤマカガシ
おとなしい蛇で、人を見ると逃げ出す。こちらがかまわなければ攻撃してこないが、逃げ切れず攻撃態勢をとることがある。
奥の牙に毒があり、首にも毒腺がある。
前歯には毒がないので、それでかまれても問題ないが、棒などでたたくと首筋の毒腺から毒を飛ばして攻撃してくることがある。
目に入るとひどい結膜炎になる。
作業に邪魔な場合は、逃げ道を空けて、長い棒などでそっとつつく程度がよい。
・もし蛇に咬まれたら
かまれた蛇の種類がわからないときは、携帯で写真を撮るか柄の特徴を記憶して、蛇研に問い合わせるとよい。
かまれた場所から病院が近ければ、何もせずそのまま行く。
遠ければ、マムシの場合は広い布でかまれた場所を腫れてもきつくなりすぎない程度にゆるめに巻く。
ヤマガカシはすぐに出血しないので、病院行っても帰されることがあるので、安心せずに症状に注意が必要。
地元の血清のある病院を普段から確認し、そこへ行くこと。
・血清の投与について
医師により対応が違う場合があるが、したほうが重症化しません。
毒の作用について
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ニホンマムシ |
ヤマカガシ |
毒の作用 |
壊死作用はない |
血液凝固作用 |
膨張作用 |
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血小板凝集作用(出血おこす) |
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末梢血管拡張作用(血圧低下) |
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症 状 |
腫れと痛み。
毒の量が多いと全身性の出血や腫れがおこり急性腎不全を起こすと死亡する場合があるので、血清をうつこと。
・壊死は、毒ではなく腫れて血管が圧迫され、血流がとまり起こる。切開して減圧すると良い。
・血清を打っても、腫れと痛みはすぐにとれないが、重症化を防げる。 |
腫れも痛みもない。
時間がたってから、歯茎や傷跡などから出血が始まる。
DIC(血が止まらない状態)にいたると急性腎不全になり、死亡する場合がある。
血清が非常に良く効く。 |
傷 口
(牙跡)
マムシとヤマガカシの違い |
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2本の毒牙跡が残るが、1本の場合もある。
咬まれたときは大きな痛みはなく、マムシはすぐ逃げるので、咬まれたと気がつかない場合がある。
:「マムシ対策研修講座」研修テキストより両画像出典 |
咬まれても毒が入らない場合が多い。
これはシマヘビの牙跡だが、ヤマカガシもそっくりで、マムシとは区別できる。咬まれた時は引っ張らずに押し付けると口があいて取れる。 |
血清について
過去に血清を使いアナフィラキーショック(血圧低下や呼吸困難)を起こした例があるため、またマムシ毒による腫れについては即効性がないため血清を積極的に使わない医療機関があるが、腎不全を起こすような重症化を防ぐために血清の投与は必要である。
アナフィラキーショックを防ぐために、前もって抗ヒスタミン剤とステロイド剤を投与し、その後血清を1本30分ほどかけて点滴することが重要です。
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