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イトマキケイソウ属Pleurosira laevis プリューロシラ ラービス

 
 
2010年8月、神流川で行う観察会の準備にケイソウを調べてみると、見たことのない大型の種がいました。
 調べてみると、日本淡水生物学では Biddulphia laevisビッヅルフィア ラービス、2005年に出版された淡水珪藻生態図鑑ではPleurosira laevisプリューロシラ ラービスで、中心目ビドゥルフィア科Biddulphiaceaeです(なおラービスは我流ルビ)でした。 きれいな和名イトマキケイソウ 属は小林弘珪藻図鑑を参照しました。
 本来は熱帯や亜熱帯の汽水域に生息すると考えられてきましたが、生息情報が少ないのではっきりしないようで、電気伝導度と水温が高い水域で見られ、汚濁に耐える可能性があるそうです。
 私の知る群馬の何本かの川には記録がありませんが、今年の夏、群馬工専のため池で見られたと聞きました。
 その後同年11月、同所で外来のプラナリアアメリカツノウズムシを確認しました。 在来のプラナリアと違い、汚濁の進んだ河川の下流域に生息していると聞いていました。 
 群馬の清流と言われる神流川ですが、一緒に確認してしまい、心中複雑です。 
                                                                                   
 デジタル顕微鏡で撮影した画像。560倍。 光学顕微鏡で撮影した画像。(10×70) 
 Biddulphia laevisビドゥルフィアラービス。特徴のジグザグ群体。
横から見た帯面が見えてます。大体同じような大きさ同士で
つながってるように見えます。
自然乾燥させた試料です。
 永久プレパラートを作成し、撮影しました。上から見た殻面。大型種なので、
よく写ります。左右にある穴のような矢印の部分(眼域)から粘液が出て、
ほかの細胞とくっ付いて、左上の画像のようなジグザグ群体を作るのだそうな。
 
 酸処理して 永久プレパラートを作成したので、画像はクリアになりましたが、
群体はバラバラに なりました 。
中央やや下に茶色で丸いのが見えますが、
これがBiddulphia laevisビドゥルフィアラービスの上から見た殻面です。
 珪藻の形態はお弁当箱(昔の蓋をかぶせる式の)で、蓋を開けるとその中に新しいのがもうひとつ入っていて増えていく、とよく説明されます。ピンぼけですが、上の画像、そのとおり、中にもう一個透けて見えます。分裂直前だったのでしょうか。1回の分裂で結構小さくなるんですね。ほかにもこういう親子(?)細胞がありました。
横から見た帯面も上から見た殻面も見えてます。
 蓋が取れたのは、ガラスのコップのようですね。 
 上にひっくり返ってるのが外れた親細胞の蓋で、下にある帯面が見えているのは生まれた(?)子細胞でしょうか。上の画像の親子の大きさの割合が似ています。茶筒そっくり。ところでいつジグザグ群体はできるのでしょね。自然乾燥させた試料。
 Pleurosira laevisの蓋が取れた親細胞の中に、すっぽり収まっている子細胞。
そう見えるのですが、どうでしょうか。
子細胞の点紋(粒粒)がはげたりしてなくて、とてもきれいです。
(永久プレパラート・光学顕微鏡で撮影
 同じく中心目ビドゥルフィア科Biddulphiaceaeのヒドロセラ属Hydrosera whampoensiseも少ないですが、いました。アルカリ種、温帯に生息。 この種は佐渡正明寺でトキの餌場調査時に見て以来、これで2度目です。群馬では初めて見ました。流下細胞かもしれません。 (永久プレパラート・光学顕微鏡で撮影


 参考文献
上野益三(1973)日本淡水生物学.(株)図鑑の北隆館
小林弘、井出雅彦、真山茂樹、南雲保、長田敬吾(2006)小林弘珪藻図鑑.内田老鶴圃
渡辺仁治(2005)淡水珪藻生態図鑑.内田老鶴圃

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